本協議会の設立趣意

 我が国の国是である「科学・技術立国」を支えるアカデミアの使命として、ライフサイエンス分野においては、医薬品・医療機器にかかるイノベーションの創出が強く期待されている。これまでわが国は、ライフサイエンスの基礎研究に多大な投資を行ってきたが、その成果が国民に十分還元されているとは言い難い。そのため文部科学省は過去10年、基礎研究の臨床応用を目指す橋渡し研究に地道に投資を続け、ようやくアカデミアにおいても、国際ルールに沿った新規医薬品・医療機器の開発が進められるようになった。こうしてわが国全体の研究開発パイプラインがアカデミアに確立し、同パイプラインから生み出される新規医療技術について、開発シーズの適応疾患から全体を俯瞰し、またどのシーズ開発に対して優先的に投資を集中すれば、どれくらいの期間でいかなる便益を国民にもたらしうるかも概算できるようになってきた。近年、新規医療技術開発における国際競争はますます激しく、我が国が今後、国民の健康と公衆衛生の向上を確保するために、アカデミアはその使命を深く自覚し、かつ、その責任を果たさねばならない。治療法のない難治性疾患に対しては新たに安全かつ有効な治療法を開発し、すでに治療法のあるものについては標準治療を革新して国民に届けることは、アカデミア、とりわけ、「医療の憲法」である医療法に規定された特定機能病院の責務である。なかでも、収益性のない難治性・希少疾患等に対する治療法の開発においてアカデミアの役割はきわめて重要である。現在、医学・医療は人類未曾有の革命期にあり、この革命を担うべく日本全国の医師・研究者は連携して、より深く人間を理解し、より高い精度で疾病を理解し克服する科学を推進せねばならない。

 ここに、全国のアカデミアのネットワークを構築し、その連携の推進を図り、より安全かつ有効な医療の実現を通じて国民の健康と公衆衛生の向上に資することを目的として、ARO協議会を設立する。

平成25年2月1日

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